鏡の中の少女

鏡の中の少女
菊池 幸子 森川 那智子 スティーブン レベンクロン
集英社
売り上げランキング: 130360













バレエに打ち込むひとりの少女、フランチェスカ。
鏡に映る自分の姿を見つめる。


もっと痩せなくては。

痩せれば、勝てる。


そして新しく誕生したのは、ケサ。

ケサとは、食べモノの誘惑に負けない確固たる信念を持ち、
無駄のない完璧な身体を持つ、
フランチェスカが創り出したもうひとりの人格。

物語が進むにつれ、
ケサはフランチェスカを呑み込み
ココロを蝕んでいくのです。



この小説は、拒食症に陥った少女と
その家族、さらに医師や入院患者たちとの
人間模様を描いた壮絶なストーリー。

拒食症を経験したヒトならば誰しも
食に囚われ、自分を追い込んでいくその過程に

共感と、焦りと、悲しみを覚えながら
読むことができるでしょう。


さるきちあまりに衝撃が大きかったのか、
一晩眠ることができませんでした。 blueday


摂食障害のムツカシイ専門書と違い、
物語だからこそ、
この病気が持つ特有の世界に引き込まれちゃったのね。 うーん



仕事人間の父は厳格で癇癪持ち。
食事の作法にもうるさく、
フランチェスカは食卓ではいつもびくびくしています。

彼は絶対的権限を持ち、
自身の偏屈な信念に固持し、
さらにそれを他人にまで押しつける傲慢さも
兼ね備えています。

そしてそんな父に従順な母グレース。

フランチェスカには姉と兄がいますが、
二人はすでに家を出ています。

姉は問題児で両親は振り回されてばかりでした。
一方兄は成績優秀で自慢の息子。


ねぇ、

じゃあ、フランチェスカは?


両親にとって彼女は

「手のかからない良い子」

そして、


「うっかりすると、いることさえ気づかない…」


両親がフランチェスカの異変に気づいたのは食事時。

お皿の上で料理を細かく刻み、
ほんのひとかけらを口に運ぶケサ。

体重は目に見えて減少していきます。

ベッドに横たわり、浮き出たあばら骨を数えるケサ。

「骨って好き。」

美味しそうな匂いのする露店前を通るときは
頭の中で呪文を唱えます。

ケサ・ケサ…

父親に無理矢理食べさせられると
洗面所にこもり吐き出します。

怒鳴られても聞こえない。

ケサ・ケサ…

トイレの便座にはお尻をつけられない。
歯を汚す食べモノなんて食べれない。
部屋では狂ったように踊ります。

もっと痩せなければ。

ケサ・ケサ・ケサ…


オーディションに合格すれば
憧れのマダムにも認めてもらえる。

でもね、

やせ細った長身の身体に踊る力はありません。

それどころか、
バレエに対する興味すら失ってしまうのです。


もはやフランチェスカの念頭には痩せるコトだけ。


その後フランチェスカは強制入院、
胸にカテーテルを埋め込まれ
胃に直に栄養を送らねば死んでしまう、
そんな状況にまで追い込まれていきます。


どうして?何がいけなかったのでしょう? くすん


理解ある医師の登場で
フランチェスカはココロを開いていき、
根本の問題が明らかにされていくんですけどね、

医師に促され、
フランチェスカは初めて本音を吐き出します。


私には居場所がないの。


両親に対して明かした彼女の胸の内。
その悲痛な叫びは両親には衝撃でした。



医師:「どう、ケサ?家族になにを望む?」

フランチェスカ:「わからない」

止まっていた涙がまた溢れ出した。

医師:「考えてみるんだ、ケサ」

フランチェスカ「わからないって言ったでしょ。
         わたし、わかりたくない。わかりたくないのよ」

涙が溢れ、そして言葉も溢れてきた。

フランチェスカ:「そんなものはほしくない。憎んでいるわ。でも必要なの」

医師:「どういうこと?何を憎んでいるの?」

フランチェスカ「家族よ。憎いわ。でも、ほしい。
        あの人たちをほしがる気持ちが憎い。
       憎んでいるの。憎んでいるのよ」

医師:「どうして憎んでいるの?」

フランチェスカ「ほしがる気持ちを憎んでる。
       だって、絶対手に入らないものがほしいなんて」

父:「いつだって、おまえが望んだものはなんでもやってきたじゃないか」

フランチェスカ:「わたし今までに何か望んだ?
         わたしが望んだことってなに?」

驚きはショックに変わった。

父:「そんなになかったと思うが」

フランチェスカ:「そんなになかった?
         なにもなかったって言った方がまだましよ。 

         わたしはなんにももらってない。
         グレッグ(兄)は褒められた、スザンナ(姉)は
         関心を持たれた。で、わたしは何にも。

         パパから何にも、ママからは何にもよ。
         ママはわたしのこと、好きでさえない」

フランチェスカ:「ママはわたしのことなんて、
         全然愛してくれなかったし、これからもそうよ。
         ママはスザンナを愛してて、わたしにはそうじゃない」

最後の感情のほどばしりに、みんな、ケサ自身も驚いた。

医師:「ケサ。僕はきみを誇りに思うよ


注)一部抜粋です



愛の反対は憎しみではなく無関心である

とは、マザーテレサの言葉ですが、
フランチェスカが身を滅ぼしてまで欲しかったのは、
両親の関心、愛情だったのです。

拒食症は、フランチェスカの
最後のカードだったのです。


この小説には
家族間の問題が色濃く描かれています。


でもね、

その問題とは決して
単なる悪質なモノとは違うのです。

両親だってフランチェスカを愛しているのです。
思いやるココロは持ち合わせているのです。

ただ、それは
フランチェスカには届いていなかった。

彼らの思いはまるで決して交わることのない
3次元のベクトルのよう。

その様子を俯瞰しているのは、
なんとももどかしく、せつない。 くすん



そして、摂食障害は患者本人だけの問題でないことも
顕著に表れています。


注目したいのは母親のココロに宿る影です。
文中こんな件があります。

フランチェスカが拒食症と診断された直後です。


「グレースは怒りと涙で目がくらんだ。
20年間ためてきたなみだが堰を切り、
グレースは自分の部屋に駆け込んだ」


さるきち、あれ、と思ったのよね。はて
 
フランチェスカは16歳なのです。

20年間??


また、娘の病状が悪化し
呆然とする父親の姿を見て
どこかうれしい気もした、という母グレース。

さらに、

母親としても失格、娘としても失格

と自分を非難する場面もあります。
母親に対するコンプレックスもあるみたいなのね。


このように、
摂食障害という病気の形をとって
ココロの闇が具現化したのは、

たまたま

フランチェスカだったのですが

少なからず、母親もココロの問題を抱えているのよね。

そしてそれは、父親だって、姉だって…

ううん、

ヒトは誰しも程度の差こそあれ、
ココロに闇を抱えているのよね、きっと。


ココロの病気は、
患者も周りのヒトたちもツラく、苦しいものですが、

自分と家族の関係修復には必要なモノ、と
いえるのかもしれません。

自分をより幸せに導くために、
必然的に生じるモノなのかもしれません。


病気を乗り越えた時、
きっともっとココロ豊かな人生が
待っているはず。。

さるきちも、もっと幸せになれるのかもしれない。。


下巻「鏡の中の孤独」、
さるきちまだ手が出せないのよね。。

読んだらご紹介したいと思います。



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theme : 摂食障害
genre : 心と身体

tag : 拒食症 家族 患者 バレエ 無関心 マザーテレサ 母親 コンプレックス

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comment

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おはようございます♪

 さるきちさん、おはようございます。
 先日の私のコメントのお返事頂けて嬉しかったです♪

 私のブログにコメントしようとして頂けたみたいなのですが、わたくし、コメントの禁止設定?を何やらやらかしていたようで(笑)先ほど解除したはずなので宜しかったらまたコメントして頂けたらな、と思います^^

 それにしてもこちらの本、さるきちさんの紹介文を読んでいると、とっても興味があります。骨を数えてうっとり、ってのは一時期私もそういう気持ちを抱いていた頃があったので・・・。下巻が気になります〜。

 摂食障害って、患者本人だけじゃなくて家族との関わりがすごく重要ですよね。私は自分だけじゃなくてお母さんまで病気に巻き込んでしまったので、姉妹からは嫌われています。というか、自分(姉妹自身)のせいで私が過食する、という事にならない為に、私を避けているだけなのかも知れません。
 母とケンカになった際に一気に母からぶわぁ〜っと日頃のちょっとした私の行動などに対して文句を言われたりするのですが、「食事の度にあんたがおかしくなるんじゃないかってピリピリする」と言われたりしました。どうもがいても、これから先も、きっと家族にはそういう思いをさせてしまうんだろうな、と思います。

 やっぱり私はさるきちさんが羨ましいなぁ・・・。旦那さんがいて。私は早く結婚したい、というか、旦那さんが欲しいです。さるきちさんの旦那さんみたいな優しい旦那さんが欲しいです。
 ぶっちゃけちゃうと、私は彼氏いない歴=年齢なので、男の人と付き合ったことすらないのですが、今になってみて「あぁ・・・せっかく共学の学校に通っていたんだからあの時あーしとけば良かった・・・」と後悔したりもしています。

 でも、ま、自分で言うのもなんですが、まだまだ先が長いんだから、焦らず毎日を過ごしたいです。

 また覗きに来ますねっ♪

No title

こんばんは。前のコメントにレスありがとうございましたm(_ _)m
(4/28の育毛(…?)の記事につけさせて頂いたコメントです)

あれから一度、妹が隠れて部屋で毛を抜いてるのを見てしまいました。
母には止められた事があるので「言わないでね」って言われましたが、
とりあえず「できたらヤメようね」って言ってみました。「お母さんに、
『もうやってないよ』って言う時も、嘘ついとるって事やんね。そういう事
平気でできる人になって欲しくないんや」って。伝わったかなぁ…??
よけいな事言っちゃったんでしょうか(´−`?)

さるきちさんが紹介されてる本は、読んでみたいなぁと思うモノが
たくさんあります。基本的には物語が好きなので、鏡の中の少女 も
ぜひ読んでみたいと思います。ではまた…(*´−`*)ノノノ

No title

>ゆきさん
家族って、皆でひとつの神輿を担いでいるものだ、
とある本に書いてありました。

担ぎ方に偏りがあると、一番弱いヒトが脱落しちゃうわけです。
ココロの病気にかかるヒトが正にそのヒトに当たるわけで。

皆で担ぎ方を見直さないと、
いつまでたっても神輿はよろよろしたままなのです。

病気になったからって、ゆきさんだけが悪いわけじゃないです。
“たまたま”ゆきさんだったというコトなのよね。
家族皆で、病気に向き合っていけるといいですね。

さるきちの旦那サマはなぜか
ブログ上で人気がありますが、
さるきちのモノですっっ(笑)

出会いってわからないものですよね。
焦らなくってきっと、だいじょうぶ。

さるきちもまた遊びにいきますね。
今度こそコメントを残せるかな(笑)


>geheimnis_hさん
本人もわかってて止められないんでしょうね。
その場合、「やめなよ」という言葉は耳に入らないでしょうから、
せめて剃刀にしたら、、なんて提案してみるのはどうでしょう??
毛抜きは肌を傷めるので。。

さるきち下巻を読み始めました。レビューをお待ちくださいね(^0^)。

No title

この本私もだいぶ昔に読みました。

摂食障害でかなり、やんでいるときだったので、衝撃を受けてことを覚えています。
病気の本は読み漁りました。今は、海外なので本がなかなか手にはいらないのでつまらないです。
実は今、腰を悪くしてしまって、ほとんど、動けない状況でかなりつらいです。もう、4ヶ月近くなります。健康が大事だと思います。

普通のときはきずかないけれど。。毎日、何も出来ずにいる日々はとてもむなしいです。。何で、生きてんのみたいなねっ。
暗くなってしまってごめんなさい。明日になれば、また考えがかわるかも???


No title

>たーちゃんさん
こんばんは。たーちゃんさんも読書家ですね。
海外だとなかなか欲しい本が手に入りませんよね。あっても割高ですし。

うわわ。動けないってツライですね。
腹をくくって読書に時間をあてるしかないのですね。
amazonが使える環境だといいのですが。。
どうぞ、お大事に。

たーちゃんさんのコメントに、さるきちは救われていますよ。
いつもありがとうございます。
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Author:さるきち
摂食障害(過食嘔吐)10年目のさるきち@主婦です。

治したい。でも治りたくない。

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