鏡の中の孤独
「きみはちっぽけな世界に住んでいるんだね」
痩せるコトでしか、自己主張のできなかった
フランチェスカ。
ベットに横になり、
浮き出たあばら骨を数えては
満足していた彼女が、
大きな世界へと、羽ばたく。
「自分の世界が、
自分と自分の身体との競争だった頃に比べて、
広がっていることに気づいた。(中略)
ケサは立ち上がり、天井に向かって両腕を伸ばした。
私は挑戦する。本当よ。
結局は誰もがこういった部分を持っているんだわ。
私も自分のものは引き受けていくわ」
部屋の中で独り、裸で天を仰ぐ少女。
鏡に映るその姿は凛々しく美しかったに違いない。
さるきちは鳥肌が立ちました。
まるでさるきちまで、大空に飛び立てそうなくらい。
この本は、前作「鏡の中の少女」で
拒食症に陥り、強制入院、
生命の危機を脱したフランチェスカ−ケサ−が
退院したところから物語が始まっています。
体重を増やすことを頑なに拒むケサ。
でもね、ケサが敵視していたのは、
体重の数値だけではなかったのです。
世界そのモノだったのです。
信頼のおける医師サンディとのカウンセリングを通し、
ケサは少しずつ、
ココロの奥底にしまい込んだ
感情を解放させていきます。
さるきちたちも同じです。
拒食、過食、過食嘔吐によって
目をそらしているのです。
本当は向き合わなくちゃいけない、自分の感情から。
それは受け容れがたいモノです。
でもね、
もっと「生き」たい。
もっと幸せになりたい。
そう思うならば、勇気を出して
対峙しなくちゃいけないのね。
小さな少女、ケサのように。
さるきちはね、
失敗を恐れ、変化に怯えるケサに
さるきちはエールを送り続けました。
16歳という思春期まっただ中の彼女が
直面する問題は山のようにあったのよね。
サンディはいいます。
「きみは、責任持って行動することと、
他人に対して責任をとることを、
ごっちゃにしていると思うな」
ケサはね、
母親の機嫌が悪くならないよう
気を遣っていました。
母親が泣きそうになっていたら
元気にしてあげなくちゃと思っていました。
一方で、
母親の態度(ケサに対しびくびくしていた)や言葉に
イライラしてしまう自分もいたのです。
ケサ:「まわりのみんなに対して
責任があると思っているわ」
サンディ:「だから腹が立つんだよ」
ケサ:「どうして?」
サンディ:「他人に責任を持つってことは、
人間関係と同じように、ひとつの仕事なんだよ。
(中略)
自分を働きづめにさせる人たちが
しゃくにさわるようになる」
他人の感情に対して責任を感じる
これって、さるきちも当てはまります。
さるきちも、
旦那サマの感情を勝手に想像し、
自分の感情を抑えたり
自分を責めたりすることがあるからです。
でもね、
先ず、自分の感情を伝えなくちゃいけないんです。
旦那サマがどう感じるか、
それは伝えなくちゃわからないし、
たとえ何を感じたとしても
それは、
旦那サマが解消すべき感情なのです。
他にもね、
さるきち共感できる部分が多くありました。
例えば、
言葉にする前に頭の中でリハーサルする、だとか。
誰とでも仲良くできる一方で
ココロから信頼するヒトがいない、とかとか。
ケサはね、
家族の調整役でした。
厳格な父と、自己主張のない母。
自由奔放な姉と、成績優秀で完璧な兄。
良い子ちゃんでいるコトが
ケサがこの家族の中で生き延びる術でした。
できるコトがあたりまえ。
そうするとね、“失敗”ができなくなるのです。
失敗を恐れ、自分を出せなくなるのです。
そうして、押し込めてきた感情が決壊し、
拒食症という形で顕在化したのよね。
少しずつ、少しずつ、ケサは変わっていきます。
さるきちは自分の未来を見るようで
すごく励まされました。
さるきちたちにも、
明るい未来があるのです。
病気から解放される日が、
きっと、来るはず。 
「ケサは言った。
声をかぎりに叫び、
通りを駆け抜けていきたいような気分だった。
とってもいい気分!
わたしはわたし、ケサ、
そしてわたしは大丈夫! 」
ケサが憧れていた
「ウエスト・サイド・ストーリー」のマリア。
鏡に映る自分の姿を見て、
今のケサなら、きっと歌えるはず。
「わたしってキレイ」
ところで、、
この小説には、
ディアドレという過食嘔吐を伴う
拒食症の少女も登場します。
彼女は、、、
嘔吐によるカリウムの低下で
心臓発作を起こし死んでしまいます。
便器に残された彼女の前歯・・・
なんて悲劇的な最期でしょうか。
さるきちは身震いしました。
そして、
加納マルタの言葉を思い出しました。
「もっとひどいことにだってなりえたのです」
さるきちは、ディアドレになり得たのです。
嘔吐をした後
震えを感じるヒトも多いでしょう。
それって、さるきち思うに、
ココロの震えなのです。
死をすぐ間近に感じた恐怖に怯える、
ココロの震えなのです。
だから、自分でしっかり
自分の身体を抱きしめてあげてください。
ぎゅって。
この小説の著者は
スティーブン・レベンクロン。
拒食症専門のサイコセラピストだそうです。
拒食症の実情をありのまま描いていて、
そして、患者に希望を与えてくれる
貴重な一冊といえるでしょう。
米・英ではテレビ映画化されてもいるそうですが、
観るには、ちょっと勇気が要りますね。
ぽちっとお願いします












