凍りついた香り
ずるずると惹き込まれてしまった
小川洋子ワールド。
さるきちのここ最近の心理状況を鑑みると
避けておくべきだったのかもしれない。
でも読み出したら、止められないーっ。
恐るべし。
さて、
突然の恋人の自殺から
物語は始まる。
なぜ、突然、死んでしまったのか。
涼子に残されたのは
死ぬ前日に彼からプレゼントされた
孔雀の模様が彫ってある小瓶に入れられた香水。
調香師だった恋人、弘之。
「孔雀は記憶を司る神の使いなんだ」
キーワードは、彼がフロッピーに残した
いくつかの“香り”を表現した詩。
涼子は自殺の真相をつきとめるため
過去をさかのぼり、謎解きをしていく。
それは、
生前成し得ることができなかった、
彼との隙間を埋めていくことになるのだった。
彼女は彼をルーキーと呼んでいた。
でも、彼の生い立ちを追うに連れ、
彼が“本モノ”のルーキーであったコトを知る。
アイススケートが得意だったコト。
数々の数学コンテストで優勝するほどの
天才児であったコト。
そして…
そんな彼に過度の期待をかけていた
母親の存在。
今も、ルーキーが勝ち取った
たくさんのトロフィーを磨くコトだけを
生き甲斐としている、母親。
「家族は交通事故で死んだって聞いていたのに」
ルーキーはきっと消し去りたかったのだ。
彼の“善”をすべて奪い取った母親を。
でも、消せなかった。
彼の中には、母親の“悪”が残った。
その“悪”を消す術は、
死の他にはなかったのかもしれない。
彼が存在しているか、いないか、
それは触れるものがあるかないかの、
些細な違いでしかないのに、
二つの間を埋められるものは何一つない。
恐ろしいほどに何一つない。
死んだヒトは蘇ることはない。
でもね、香りに残された記憶をたどっていくコトで
涼子は少しずつ、
死んだルーキーに近づいていくのだ。
たどりついたのはウィーン。
それは、ルーキーが出場した最後の
数学コンテストが開催された場所だった。
そこで、すべての謎が解ける。
さるきち、読んだ後
かなり沈みましたよ。ハハ。
だって、ハッピーエンドではないから。
ココロの奥底にもやもやが沈殿するような、
そんな結末だから。
小川洋子も危険度が高いですね。
気をつけなくっちゃ。
彼女は尊敬する作家に
村上春樹を挙げています。
本書にも「ハードボイルド・ワンダーランド」に
作風が似ているかな、と感じました。
それにしても、、
冒頭で、ルーキーが死んだと、
病院から電話があった時。
「すぐにいらしてください。よろしいですね」
私はアイロン台の前に戻った。
そしてやりかけていた弘之のワイシャツに、
アイロンをかけた。
すぐに行かなければならないと、分かっていた。
財布だけをポケットに突っ込み、
タクシーを拾い、何をおいても病院へ駆けつけるべきだった。
なのに私の手はアイロンを動かしていた。
今はこれをやりとげることが、
何より大事なのだとでもいうように、
丁寧に衿の皺を伸ばしていた。
これを着る弘之は、もう死んでしまったというのに。
さるきちね、
ぞっとするほどのリアリティーを感じたのでした。
そして、小川氏が描く世界に
ずっぷりのめり込んでいったのでした…
☆おススメ品☆
↓ ビビアンウエストウッド
ボトルの形が好き。
↓ エスティ・ローダー
ビヨンド・パラダイス
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